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中期経営計画(2022年度~2024年度)

さらなる高収益体質への変革を実現するための、抜本的な改革を推進

2022年度から2024年度までの今中期経営計画では、成長戦略の推進、収益性の向上、経営基盤の強化、ESGの取り組み強化という4つの基本戦略に基づく取り組みを行っています。戦略ごとに、マテリアリティとも紐づく取り組みテーマを設定し、スローガンである「PASSION FOR YOUR SUCCESS」の実現を目指した取り組みを進めています。長年培ってきた制御技術をベースに、自動化・無人化・省力化需要や、安全・安心・ウェルビーイング意識の向上をはじめとする注力分野に対応した取り組みを推進することで、新コンセプトである「HMI-X」を推進し、社会課題解決への貢献と、持続的な成長、カスタマーサクセスの実現を目指しています。
なお数値目標については、初年度の2022年度に達成したことから、新たな計画を2023年5月に発表しました。中長期的に20%以上の営業利益率を実現していくために、抜本的な改革を今中期経営計画で推進することで、さらなる高収益体質への変革を進めていきます。
また、カーボンニュートラル実現に向けた環境負荷低減の推進に加え、人的資本への投資拡大、働き方改革の推進などによりエンゲージメントを向上し、企業基盤を強化することで、グローバルでの持続的な成長を可能にする、強固な基盤づくりを行っていきます。

成長戦略: HMI-X推進のための取り組み 1

コラボレーションによる新市場の拡大

中期経営計画の成長戦略の一環として、さまざまな業界のリーディングカンパニーとのコラボレーションによる、新製品開発や販売網の拡大を図っています。また、新コンセプトであるHMI-X[Transformation]実現のため、新しい機能を盛り込んだ製品開発を推進することで、市場拡大にも取り組んでいます。

2021年9月に、アルプスアルパイン株式会社との合弁会社となる、IDEC ALPS Technologies株式会社を設立し、新しいHMI価値の提供を通じて、安全・安心な社会に貢献することを目指した製品開発を行っています。双方の国内外の拠点がリモート環境下で連携・協力し、2023年5月に第1弾となるマルチユースミリ波レーダセンサ「1A1M形」を発売しました。
企業文化や考え方が異なる両社が、双方の強みであるHMI、センシング技術を結集した、多様性によるイノベーションを体現した製品となっています。
現在、他の製品開発も推進しており、この製品を皮切りに開発中の製品ポートフォリオで、発売後3年間で10億円の事業規模の実現を目指しています。

両社の強みを活かした新製品の開発

今回開発したマルチユースミリ波レーダセンサは、高周波のレーダ(本製品では60GHz)を対象物に照射してセンシングを行うことで、約10m距離までの対象物の有無検知や、対象物までの距離を検出することができます。低消費電力で耐環境性にも優れており、光学式センサでは検知が難しい、西日や降雨降雪がある屋外、水蒸気、粉じんが舞うような環境下でも使うことができ、超音波式センサと比較してもより高い耐環境性能を有します。FA現場でも、超音波式センサの代替として強みを発揮します。
なお、ミリ波レーダは、これまで主に車載で使われてきたため、産業機器向けに製品化されたものはほとんどありませんでした。今回、民生・車載向けで培われたアルプスアルパイン株式会社の技術と、産業機器向けのIDECのHMI技術・ノウハウを駆使し、実証実験による地道なノウハウを蓄積することで、産業市場のお客さまの使い方にベストマッチする、オンリーワンの競争優位性を持つ製品を開発しました。
アプリケーションに応じた出力機能や各種のビーム成形レンズなど、今後さらにラインアップを拡充し、FA業界以外にも、特殊車両や駐車場、駅、インフラなど幅広い業界ニーズに対応しています。

<活用事例>
有無検知
・駐車場の車検出 (車/人識別アルゴリズム搭載予定)
・光を吸収する素材 (ゴムや黒色系のワークなど)の検出

距離検出
・洗車機に入る車の車幅検出
・樹脂窓の外からタンク内の液面レベル検出

成長戦略: HMI-X推進のための取り組み 2

安全・安心・ウェルビーイングを実現する多様なアプリケーションの提供

IDECでは、パーパスである「人と機械の最適環境を創造し、世界中の人々の安全・安心・ウェルビーイングを実現する」ため、FA業界のみならず、多様な業界のお客さまの課題を解決する、さまざまな製品やシステムを開発、提供しています。中期経営計画では、HMIや安全に特に注力していますが、その中でも、人と機械が協調する「協調安全/Safety2.0」の需要が増加していることから、安心して働ける職場環境を実現し、働く人々のウェルビーイングを向上していける、さまざまなアプリケーションの拡充を推進しています。

Case1: 非常停止アシストシステム

IDECでは、国際安全規格に対応するだけでなく、独自の安全技術を搭載することで、作業者の安全を守る非常停止用押ボタンスイッチは、国内シェア70%を獲得しています。しかし、非常停止用押ボタンスイッチは、押した際には確実に装置を停止させることができますが、手で押さない限り停止しないため、近年需要が拡大しているAGV(無人搬送車)・AMR(自律走行搬送ロボット)などの装置に設置した場合、移動中は押しにくく、押す場合も接触のリスクがあることが課題になっていました。今後、労働人口の減少や自動化の加速などにより、あらゆる場面で、各種ロボットをはじめとする自律移動装置の増加が予想されることから、安全な場所から装置を止めることができる、非常停止アシストシステムを開発しました。

このシステムは、作業者が腕に無線送信機(ウェアラブルスイッチ)を装着、操作することで、AGV・AMRなどに設置している非常停止用押ボタンスイッチを、押した状態と同様にすることができます。離れた場所からでも、安全に装置を止めることができるため、安心できる職場環境づくりに貢献します。
システム導入前と後に実施した調査では、危険事象の防止や作業者の安心感の向上、緊急時の停止などで大きな効果が出る結果となりました。

Case2: ANSHINセンサ

近年、さまざまなシーンにおいて、安全柵なしで人と同じ現場で働くことができる、協働ロボットの導入が進んでいます。協働ロボットには、接触した場合に停止する機能が搭載されているため、接触時でも大きなケガはしないものの、衝突することへの作業者の恐怖心や、止まるたびに再起動が必要になるなど、生産性や効率性の低下、作業者のウェルビーイングの点で課題がありました。

ANSHINセンサは、協働ロボットやAGV・AMRなどの移動体、人とロボットが共同作業を行う生産ラインなどに取り付けることで、近づいたり、軽く触れるだけで、ロボットの動作を一時停止させることができる製品です。接触に対する不安を取り除くだけでなく、協働ロボットなどの装置やラインが完全停止することで生じる、生産性の低下を防ぐことが可能となります。


Case3: 高所作業車の挟まれ防止システム

建設現場では、製造業のような「隔離の原則(人と機械を空間的に分離する)」や、「停止の原則(人と機械を時間的に分離する)」に基づいた安全管理が難しく、作業員と建設機械が接触することで、重篤な労働災害が発生することがありました。こういった背景を踏まえ、人間工学に基づいてIDECが開発した3ポジションイネーブル装置や各種センサを搭載した、挟まれ防止用システムを開発しました。

このシステムの導入により、作業者が天井や躯体と高所作業車の間に挟まれることで発生する、重篤な労働災害を防止し、安全・安心な職場環境づくり、働く人のウェルビーイング向上を実現します。

成長戦略: HMI-X推進のための取り組み 3

成長するマテリアルハンドリング業界におけるソリューション展開を強化

IDECグループの製品はさまざまな業界で使われていますが、中期経営計画では、その中でもグローバルで大きな成長が期待できる、AGV・AMR、ロボット、自動車、工作機械の4つの業界に注力しています。特にAGV・AMRは、今後20%~30%の年平均成長率が見込まれていることから、マテリアルハンドリング業界は大きな成長が期待できる市場です。

2022年1月にパートナーシップ契約を締結した、ez-Wheel社(フランス)は、世界で初めて、自律走行に必要な駆動制御と安全機能を備えた、AGV・AMR向けの安全自律走行ホイールを開発したメーカーです。2020年にISO(国際標準化機構)の国際安全規格が発行され、人と同じエリアで働く場面では、搬送ロボットなどのモバイルロボットにも安全のモーション監視機能の搭載が求められるようになったことから、規格に準拠した製品のニーズが高まっています。
こういった背景もあり、規格の準拠に必要な安全機能を搭載したez-Wheel社の自律走行ホイールの需要が拡大していることから、日本での独占販売契約を締結し、2022年度からIDECの非常停止用押ボタンスイッチやセーフティレーザスキャナをはじめとする、各種安全関連機器と組み合わせた多様なソリューションの提案を行っています。

自律走行ホイールは、省力化・省人化のためにAMR導入を検討している、物流・製造業における搬送の自動化ニーズにより、採用事例が拡大しています。人が重量物を搬送する際の負担を軽減する、電動アシストホイールについては、重量物の多い自動車関連業界からの引き合いが多く、今後双方とも導入事例はさらに増加していく見込みです。
 
お客さまや業界ごとに異なる、多様なニーズに対応する必要があることから、以下の①~④まで今後対応できる体制づくりを行う予定で、2022年度までに①②を展開しています。最終的には、AGV・AMRを構築するための、ソフトウェアを含む完全なソリューションパッケージの提供を目指しており、ソフト力の強化のために、提携やM&Aなども視野に入れて検討を行っています。

(1) 製品の単品販売
(2) 最適な製品のパッケージ提案
(3) 特定アプリ向けにカスタマイズしたパッケージ
(4) システムのフルセットアップ


また、グループ会社のIDEC AUTO-ID SOLUTIONS株式会社では、物流現場の作業効率の向上を実現する、多様な自動認識機器をラインアップしており、需要が拡大するマテリアルハンドリング業界での拡販を推進しています。
IDECが強みを持つ、HMIや安全・安心などのコア技術を積極的に活用しつつ、ソフトウェアやIoTといった分野をさらに強化することで、新しい価値を創造し、お客さまの課題解決に貢献していきます。

収益性の向上・経営基盤の強化・ESGの取り組み強化

高収益を目指すための基盤づくり

中期経営計画の大きなテーマである収益性の向上に向けた取り組みの一環として、グローバルでの生産・販売・物流拠点の再編を推進しています。日本では、コロナ禍を機に、全国
にあった営業所を2021年度に東京・大阪の2拠点に集約し、海外でも生産・物流拠点やサプライチェーンの再編、構造改革を行うことで、固定費削減を推進してきました。

また、原材料価格の上昇を踏まえた製品価格の値上げをグローバルで実施するとともに、販売価格の適正化や、収益性の高い新製品比率の向上など、プロダクトミックスの見直しに取り組むことで、原価率の低減を図ってきました。その結果、2022年度の売上総利益率は44.6%まで向上し、営業利益率は16.8%と、初年度で中期経営計画の目標を達成することができました。

販売面では、ソリューション事業推進部を設立し、お客さまの課題を解決するソリューションビジネスの拡大に向けて、社内外からの人材採用・育成を図り、関係部門と連携しながら、体
制の強化を進めています。コンポーネンツについては、既存の販売網を活用することで拡販していますが、IDECの製品を積極的に販売してもらえる代理店との取引に特化した代理店網に再編し、各地域における新しい販売網の構築にも取り組むことで強化しています。

2023年度は、今後グローバルベースでさらなる事業の拡大と収益向上を実現していくための基盤づくりに向けた構造改革を推進しており、特に生産改革によるグローバル競争力の強化に力を入れています。購買・SCM機能を独立させ、客観的な立場で最適な購買を行うことで、コスト削減とIDECグループ全体での最適なサプライチェーン構築を図っていきます。また、品質とコスト改善に向けて、抜本的な生産体制・プロセスの見直しなどにも着手しています。

DXによる業務効率の向上

経営基盤の強化に向けては、全社でDXを加速することで、業務の効率化と経営のスリム化を図っています。現在推進している、ERP、SCPのグローバル導入により、既に稼働している各種システムとも相互連携することができ、マーケティング、営業活動から、受注、生産計画、購買、在庫などを同じシステムで管理することが可能となります。IDEC本社から構築を進め、中期経営計画の最終年度である2024年度末を目標に、順次グローバルに展開していく予定です。
また、全社的な業務改革も同時に行っており、各種システムの有効活用に加え、裁量労働制やフレックス制を新しく導入するなど、働き方改革による柔軟な働き方の実現と、社員エンゲージメントの向上を図っています。

技術開発や新製品の開発とともに、環境の取り組みをさらに強化

IDECグループが社会的な責任を果たしていくために、サステナビリティ対応、その中でも特に気候変動への取り組みは、グローバルで事業活動を行う企業として不可欠だと考えています。マテリアリティでも、3つ目の項目として「気候変動への対応」を掲げており、2030年の目指す姿を実現するため、サステナビリティKPIを設定し、目標達成に向けたアクションプランを推進しています。

<気候変動に対する2030年の目指す姿>
・IDECグループの技術、製品を活用した顧客・社会の環境負荷低減への貢献
・自社における再生可能エネルギー活用などによるCO2排出量の削減

一方で開発・環境担当の上席執行役員としては、開発推進と環境対応の両方の目線で、メーカーとして効果的に両立できる形を日々考えています。今回の統合報告書の自然資本のページでは、環境経営、リスクと機会の分析や移行機会などで、そうした点を意識した考え方や取り組み内容を記載しました。 
環境対応は、リスク面でIDECの事業存続に今後大きく関わる要素であるのみならず、機会面ではメーカーとして大いにビジネスチャンスとなり得る要素であるということを、IDECグループ内に浸透させていきます。

ESGの取り組み強化

カーボンニュートラル実現に向けた環境負荷低減の推進

IDECでは、2050年のありたい姿を新たに策定し、「全ての人々に幸福と安心をもたらす、より安全で持続可能な社会の実現」を目指しています。その実現のため、中期経営計画においてESGの取り組み強化に注力しており、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、環境負荷低減を進めることで、気候変動に関するサステナビリティKPIの達成をまずは目指しています。
取り組みの一環として、サーキュラーエコノミーのコンセプトを基に、限りある資源の有効活用を推進しています。製品の設計・開発段階で、部品点数の削減・軽量化、再生プラスチックの段階的採用などを進めているほか、独自基準に基づいて新製品の環境配慮度合いを点数化し、基準を満たした新製品を環境配慮強化型製品として、ISO/JIS Q 14021(タイプⅡ)に準拠したIDECオリジナルのエコマークを貼付しています。
また、製造工程や物流工程においても、バイオマスプラスチック25%以上のフィルムを使ったエアキャップを製品梱包資材として使うなど、環境負荷の低減と環境問題を重視した経営を進めています。
2022年度からは、環境に配慮した投資を促進する仕組みとして、内部炭素価格(ICP:Internal Carbon Pricing)を導入し、 CO2削減量を金額に換算することで、ICP適用による投資対効果の向上を投資判断などに活用することを進めています。

人的資本の投資拡大や働き方改革推進などによる、エンゲージメント向上・企業基盤強化の実現

2019年にエンゲージメントサーベイ(従業員意識調査)を初めて実施し、2022年に2回目のサーベイを実施しました。2019年の結果を踏まえて抽出した、5つの課題への取り組みを推進することで、2022年のサーベイでは代表的な指標である「会社の総合的魅力」、「職場の総合的魅力」のスコアがアップし、その他の多くの項目においても改善が見られました。
今後は、2022年の調査結果から見えてきた、新たな課題に対する取り組みを行っていく予定です。サステナビリティKPIとして、人的資本への投資拡大や働きやすい職場環境づくりを掲げているため、人材育成システムの強化や、働き方改革の推進などにより、さらなるエンゲージメントの向上と企業基盤強化を図っていきます。