Your browser does not support JavaScript!
Skip to content Skip to navigation menu

グローバルで持続的な成長を実現し、
社会課題の解決に貢献することで、
世界中の人々の安全・安心・ウェルビーイングの実現を目指します。

好調な市場環境や収益性向上の取り組みにより、過去最高の業績を達成

2022年度は、原材料価格の高騰や、プログラマブルコントローラなどで使用している、一部電子部品などの調達難がありましたが、グローバルベースでの製造業の設備投資需要は好調に推移し、注力業界である自動車、工作機械、ロボット業界などの需要も大幅に拡大しました。好調な市場環境を背景に、受注高は年間を通じて高水準で推移し、受注残高も過去最高額まで拡大しました。また収益性が高く、グローバルで需要が高水準で推移している制御用スイッチなどHMI製品や安全関連機器を中心に、生産ラインの増設や、海外工場への生産移管、自動化設備の導入などを積極的に推進し、生産設備の増強を行いました。

そのほかにも、より効率的な事業体制を構築するため、グローバル拠点の再編を行ってきましたが、2021年には国内営業部を子会社化し、営業所を2拠点に集約するとともに、代理店網を見直すことで効率的な営業体制に変革しています。

同時に、グローバルでの販売価格の適正化を行い、部材価格高騰に伴う製品価格の値上げや、収益性の高い新製品への置き換え促進などを行うことで、収益性の改善を図りました。こういったIDEC独自の取り組みや、グローバルでの設備投資需要の拡大が寄与し、主力のHMI事業や安全・防爆事業を中心に全エリアで売上、利益が増収増益となり、2022年度は過去最高の業績を更新しました。営業利益率についても、過去最高となる16.8%を達成しています。

>
>

持続的成長の実現に向けた長期ビジョン策定

一方、2023年の世界経済は依然として不透明で、高インフレによる経済の低迷や地政学的リスクなど、さまざまな要因が事業環境に影響を与える可能性があります。また、デジタル化・自動化の進展や、人口動態の変化、気候変動といったメガトレンドも日々変わり続けています。
こうした多様な変化に対応し、事業活動を通じて社会課題解決に貢献することで、IDECグループの持続的な成長を実現するために、今回新たに2050年のありたい姿を想定し、そこからバックキャストして2030年のビジョンを策定することとしました。

>
>

長期ビジョンの基盤になっているのは、IDECグループの 経営理念である『The IDEC Way』です。 1945年の創業以来、不測の事態でも「人の命を守る」こと ができ、人と機械の最適環境を創造するための製品やサー ビスを提供することで、誰もが安全かつ健康で、幸せに生き 生きと暮らすことができる社会の実現を目指してきました。 今後も新たな可能性を創造し、新しいスタンダードの開拓者になることで、世界中の人々の安全・安心・ウェルビーイン グを実現するための取り組みを行っていきます。

なお、長期ビジョン実現のためには、社員一人ひとりの力 が必要不可欠となりますので、創業の理念である「人間性 尊重経営」のもと、個々の能力を最大限に発揮できるよう、 人的資本への投資強化や、働きがいのある魅力的な職場づ くりによる企業の活性化を推進していきます。2022年度に 刷新した新人事制度には、活動のベースとなる、Harmony(和)、Passion(情熱)、Innovation(革新)、Integrity(誠実)、Commitment(実践)というCore Valuesを評価基準として反映しました。

2023年度に新設した社員表彰 制度でも、グループ理念を体現した社員や、Core Valuesを基にした、働くうえで具体的に意識するべき考え方・行動である、Principlesに沿って行動した模範的な社員を表彰する部門を設定することで、理念の浸透を図り、さらなる成 長を目指していきます。

  

抜本的な改革の推進による高収益体質への変革


持続的な成長を実現するためには、今後抜本的な改革が必要不可欠だと考えています。2022年度の業績は好調に推移しましたが、現在の水準には全く満足していません。2017年にフランスのAPEM社を買収して以降、急速にグローバル化が進み、主要製品の海外売上が60%を超える状況となっていますが、今後さらにグローバルでの事業拡大を推進していくつもりですので、10年以内に80%以上になると考えています。
このようにグローバル化を積極的に推進していますが、欧州や米国における制御機器業界のリーディングカンパニーは、製品開発に多くの資金を投資できる、高い営業利益を上げている企業がたくさんあります。

一方、残念ながら日本でそこまでの利益をあげている企業は、少数しかありません。今後、IDECグループがグローバルの制御機器業界で勝ち残っていくためには、研究開発費への投資拡大が必要不可欠です。2022年度の営業利益率は16.8%となり、以前より大幅に収益性は向上しましたが、それでもまだ世界のリーディングカンパニーと競争するのは難しい状況です。そのため、営業利益率は20%以上のレベルまで持っていく必要があると考えており、その水準を実現できれば、欧米の企業と対等に競争ができるような体制づくりができます。

中期経営計画の残りの2年間は、さらに収益性を向上していくための基盤づくりが必要となりますので、2023年度も引き続きさまざまな改革を推進していきます。


>
>

■組織再編による生産改革

まず何よりも必要なのは、生産改革です。現在、開発した製品はIDECの生産事業所で生産しており、本社の生産技術センターでは生産設備を作っていますが、他社から見積りを取っているわけではありません。このような従来の方法では、競争原理が働いていないため、生産性が上がらない要因の一つになっていました。

従来の体制を改めるため、2023年度より全社的に組織を見直し、各部門の責任者に社内外で経験を積んだ人材を新たに任命しました。組織再編により、各々の機能を強化できる体制をつくることで、APEMも含めたグローバルで、購買、サプライチェーン、生産における双方向での供給や、技術交流などができるようにしていきます。
例えば、IDECとAPEMが部品の共通化や部材の共同購入を行うことができれば、大幅なコスト削減が実現できます。また、今後事業所は生産拠点の一つの選択肢となり、外部での生産も含めて検討していく予定です。

このような生産改革の推進により、圧倒的なコスト低減を達成し、グローバル競争力の向上を実現したいと考えています。


■ソリューション提案によるHMI-X推進とアジア市場での売上拡大

多角化する顧客ニーズや社会課題に対応するため、多様な製品を組み合わせて最適なソリューションを提案する、技術営業部を2022年度に新設しました。ソリューションに関する引き合いは数百件あり、関係部門と連携を取りながら進めているところです。
既存のコンポーネンツ販売だけでなく、課題解決型のソリューション販売を強化することで、グローバルでの競争力の向上を図っています。

また中期経営計画では、IDECグループの新コンセプトとして、HMI-X[Transformation]を掲げています。IDECは創業当時から、人と機械をつなぐHMIのリーディングカンパニーとして事業を拡大してきましたが、時代の変化に伴い、人と機械の接点となる「Interface」だけでなく、人と機械、機械と機械などが相互にネットワークでつながる「Interaction」へと事業領域が広がってきました。
そして今後は、ネットワークでつながった機械装置に加え、人と機械が共存する空間も含めた環境を最適化することで、人々の安全・安心・ウェルビーイングを実現するための需要が高まってくると考えられます。

創業以来培ってきた安全DNAを活かし、HMIの考え方を さらに進化させた、人を中心とするHMI-Xを実現していくためには、ソフト開発力の強化が必要となりますので、人材の育成に加えて、買収・提携なども含めて検討していきます。

また、ア ルプスアルパイン株式会社との合弁会社における新製品の開発や、安全・安心・ウェルビーイングを実現する多様なアプリケーションの提供、フランスのez- Wheel社製品とIDECの安全関連機器などを組み合わせた ソリューション提案などを積極的に行うことで、 HMI-Xを推進しています。

地域戦略では、より高い成長が見込めるアジアでの事業を拡大するため、中国での現地ニーズに基づく製品開発や現地生産などによる地産地消を加速し、高効率な販売を可能にするソリューション営業体制の整備などにも取り組んでいます。
インドでは、戦略的パートナーシップなどによる、販売チャネルの強化を行っており、今後の事業拡大に伴い、生産、その他業務でタイ拠点との連携も進めていくことを検討しています。

>
>

■ DX推進による業務効率化

DXの推進は喫緊の課題の一つとなっているため、経営 基盤強化のための取り組みとして、さまざまなシステム導入 による業務効率化を推進しています。

2018年からスタートしたデジタルマーケティングのプロ ジェクトでは、2022年までにAPEMを含む全グローバル 拠点で、共通のデジタルプラットフォームを導入しました。これにより、お客さま一人ひとりにパーソナライズした、最適な コンテンツを提供できることから、商談獲得につながるプロ セスの創出を進めています。

2022年度からは、統合基幹業務システムである、ERP(Enterprise Resource Planning)基盤の構築とSCP(Supply Chain Planning)を実現できる、2つのシステ ムをグローバルで導入するプロジェクトを立ち上げ、推進し ています。システムの導入により、一連のビジネスプロセスを 一貫して管理することが可能になり、既に導入しているデジタルマーケティングや、セールスフォースオートメーションなど各ツールとも相互連携することで、より効率的なオペレーションを実現します。



サステナビリティ対応のさらなる強化

長期ビジョン実現のためには、事業活動を通じて経済価値を創出するだけでなく、サステナビリティ対応強化による、社会価値の向上が不可欠です。
今回、長期ビジョンを新たに策定したことに伴い、マテリアリティの見直しを行い、中期経営計画とも連動するサステナビリティKPIを新たに設定しました。今後は進捗状況を確認しながら、社会課題の解決に取り組んでいきます。


■ 気候変動対応

2050年のありたい姿を実現するためには、当然ながら 地球規模の大きな課題である気候変動への対応は避けられません。私たちが持続的な成長を目指す上で、環境戦略は事業戦略の重要な一部となっていることから、2050年のカーボンニュートラルを実現するため、環境対応を移行機 会として積極的に捉え、環境配慮型製品の開発、環境エネルギー事業などの活動を通じて、環境負荷低減に貢献する戦略を推進しています。


■ 人的資本への投資拡大

持続的な社会と企業価値向上を実現するためには、人的 資本の強化や企業の活性化が必要不可欠です。
そのため、マテリアリティの一つとして、新たに「企業基盤」を掲げました。 中期経営計画の施策やサステナビリティKPIとも連動させながら、エンゲージメント向上や、働き方改革の推進などに 取り組んでいます。
また、グループ全社での成長を支える基盤となる人材育成のため、次世代の経営を担う幹部候補者を計画的に選抜、育成しています。


■ ガバナンスの強化

IDECでは、早くから社外取締役を積極的に任用することで、ガバナンスの強化を行ってきました。社外取締役比率 は2016年から50%以上となっており、2022年には重要 な課題である、環境やIT戦略の分野で新たな社外取締役を任用しました。女性取締役比率についても30%となっており、多様性を確保しています。

また、重要な課題の一つである後継者の育成についても取り組みを進めており、2021年に社外取締役が過半数を占める、任意の指名委員会を取締役会の諮問機関として設置しました。取締役候補者の指名、次世代の経営幹部候補者の育成計画を客観性・独立性を持って決定する体制を整え、取締役は次世代教育のカリキュラムで講義や面談なども行っています。
2022年10月には、取締役の報酬決定プロセスの公平性・透明性・客観性を担保し、コーポレート・ガバナンス体制の一層の充実を図ることを目的として、社外取締役が過半数を占める任意の報酬委員会を設置しました。
報酬制度には、財務指標だけでなく非財務指標を反映することで、サステナビリティ対応のさらなる強化を行っていきます。

IDECグループは、このような多角的な取り組みを推進することで、グローバルでの持続的な成長を目指しています。パーパスである、「世界中の人々の安全・安心・ウェルビーイング実現」に貢献できるよう、今後も全社一丸となって取り組んでいきます。

代表取締役会長兼社長 舩木俊之