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中期経営計画(2022年度~2024年度)
PASSION FOR YOUR SUCCESS


  近年世界では、デジタル化・自動化の進展、人口動態の変化や気候変動などによる社会構造・環境の変化、VUCA※と呼ばれる、変動性が高く予想が難しい複雑化した社会への転換などがメガトレンドとなっています。また高齢化社会や地球温暖化、急速な技術革新の進展などが社会課題となっており、こういった課題への対応がグローバル企業として求められています。
 IDECグループでは2017年に中期経営計画を公表しましたが、新型コロナウイルスの感染拡大などの影響により事業環境が大きく変化したため、現在のメガトレンドや社会課題などを踏まえて計画の見直しを行い、2024年度を最終年度とする新中期経営計画を2022年5月に発表しました。新たなスローガン「PASSION FOR YOUR SUCCESS」を掲げ、長年培ってきた制御技術をベースに、自動化・無人化・省力化需要や、安全・安心・ウェルビーイング意識の向上をはじめとする注力分野に対応した取り組みを推進することで、社会課題の解決に貢献し、持続的な成長とカスタマーサクセスの実現を目指しています。
※ VUCA:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの頭文字をとった言葉

 

注力業界にターゲットを絞った市場戦略の推進

 新中期経営計画ではメガトレンドを踏まえて、注力する8つの業界の中でも、特にグローバルで大きな成長が期待できるAGV・AMRやロボット、安定的な拡大が見込まれる自動車、工作機械といった業界に注力した取り組みを推進していきます。AGV・AMRは、市場規模がまだそれほど大きくないものの、今後20~30%の年平均成長率が見込まれており、ロボットについても年6~7%の成長が期待できると考えています。
 今後これらの市場で売上を拡大していくためには、既存のコンポーネンツ販売だけでなく、業界ニーズを踏まえた新製品開発に加え、ソリューション販売の強化が必要不可欠となることから、日本や米州、EMEAなどの成熟市場において、各業界に最適な製品をパッケージ化するなど、課題解決型のソリューション提案による競争力強化を図ります。また日本においては、販売チャネルの再編・強化や、APEM製品の売上拡大に向けた体制づくりを推進します。米州ではPLCなどオートメーション製品の強化、EMEAではAPEM社のネットワークを活用したIDEC製品の売上拡大などに取り組んでいきます。中国やインドなどの成長市場においては、さらなるプレゼンス向上による事業拡大を推進します。特に大きな成長が見込める中国では、組織改革を推進するとともに、現地ニーズに基づく製品開発や現地生産などによる地産地消を加速し、高効率な販売を可能にするソリューション営業体制の整備などにも取り組んでいきます。

 

新たなコンセプト「HMI-X」の推進により、お客さまの課題を解決する
最適なコンポーネンツ・ソリューションを提供し、人と機械の最適環境を創造します。

事業領域は「Interface」から「Interaction」、そして「Optimal Environment」の実現へ

  IDECは創業当時から、人と機械をつなぐHMI (Human-Machine Interface)のリーディングカンパニーとして、グローバルに事業を拡大してきました。しかし時代の変化にともない、ものづくりの現場や生活のさまざまなシーンにおいて、制御用操作スイッチやプログラマブル表示器をはじめとする、人と機械の接点となる「Interface」だけでなく、IoTの進展などにより、人と機械、機械と機械などが相互にネットワークでつながる「Interaction」へと事業領域が広がってきました。
 そして今後は、ネットワークでつながった機械装置に加え、人と機械が共存する空間も含めた、環境を最適化(Optimal Environment)することで、人々の安全・安心・ウェルビーイングを実現するための需要が高まってくるものと考えられます。 
 こういった背景を踏まえて、これまで培ってきた安全DNAを活かし、今までのHMIの考え方をさらに進化させた、人を中心とするHMI-X [Transformation]をIDECグループの新たなコンセプトとして推進していきます。これにより、IDECグループのパーパスである人と機械の最適環境を創造し、世界中の人々の安全・安心・ウェルビーイングを実現することを目指しています。

 
 

収益性の高いスイッチ事業、グローバルで成長が期待できる安全事業を強化

 IDECはHMI製品を主力とする制御機器の総合メーカーとして、売上高の約50%を占める制御用操作スイッチで国内トップシェアを保有し、世界シェアでも第3位の水準となっているほか、創業当時から安全関連機器にも注力しています。2024年度の計画達成に向けては、現在IDECが強みを持ち、収益性の高いスイッチ事業と、グローバルで成長が期待できる安全事業のさらなる強化を推進していきます。
 スイッチ事業では、グローバルでの競争力を強化するため、製品ラインアップの拡充に取り組むとともに、新しい機能を盛り込んだNEW HMI製品の開発を行うことで、グローバルシェアの拡大を図っていきます。安全事業では、地域ニーズにあった製品ポートフォリオの拡充により、市場拡大が期待できる海外展開を加速させていきます。また安全だけでなく、「安心」も考えたイノベーション製品の創出などにも取り組んでいきます。

 

ソリューション展開によるHMI-X [Transformation]の推進

  近年のメガトレンドや市場変化により、さまざまな顧客ニーズや課題に対応していくためには、スイッチなど既存コンポーネンツだけでなく、工作機械やロボットなど各業界特有のニーズを踏まえて開発を進めるNEW HMI製品や、2021年に設立したIDEC ALPS Technologies株式会社の各種センサ、そして今後人材投資などを推進し強化を図るソフトウェアなどを組み合わせた、さまざまなソリューション展開が必要となります。またIDECのコア技術だけでなく、パートナー企業との提携や協業を通じて、お客さまの潜在的な需要を満たすソリューションの実現を目指しています。
 具体的な事例として、2022年にパートナーシップ契約を締結したフランスのez-Wheel社の製品を活用したソリューションなどがあげられます。ez-Wheel社は、自律走行に必要な駆動制御と安全機能を備えた、AGV・AMR向け安全自律走行ホイールのメーカーです。IDECとの業務提携により、ホイールを個別に販売するだけでなく、IDECの各種製品と組み合わせることで、お客さまのニーズに合わせた多様な提案が可能となります。このようなソリューションの強化により、HMI-Xを推進し、新たな価値を創造していきたいと考えています。





2024年度を最終年度とする中期経営計画の概要

 新中期経営計画では、長期的に営業利益率20%を実現するため、2024年度に売上高800億円以上、営業利益130億円以上、営業利益率16%以上の達成を目指しています。またスローガン「PASSION FOR YOUR SUCCESS」を新たに策定し、さまざまな製品やソリューション、サービスのご提供を通じて、カスタマーサクセスを実現できる体制づくりを推進していきます。
 具体的な取り組みとしては、IDECグループの新しいコンセプトHMI-X [Transformation]をグローバルで積極的に推進し、以下の4つの基本戦略に基づく活動を行っていくことで、持続的な成長の実現を目指していきます。



収益性・効率性の向上に向けた財務戦略により、
持続的な成長および高収益体質に向けた変革を目指していきます。

収益性向上:選択と集中を推進しさらなる営業利益率向上を実現

 収益性の向上に向けて、材料・製品の統廃合を継続的に実施することで、コスト削減や生産の効率化を推進しています。
 またグローバルベースの拠点集約による効率的な供給構造への変革、デジタルマーケティングの推進による販売の効率化も推進することで、収益性の向上を図ってまいります。




資本効率向上:資本効率を向上させ10%以上のROE/ROICを確保

 売上を拡大していく中でも、在庫、固定資産を適切に運用していくことで、資産回転率を向上させており、直近のROEは17.2%(特別利
益などの影響を控除した場合は約15%)、ROICは9.2%の実績となっています。
 今後は、想定資本コスト(6%)を上回るよう資本効率を向上させていくべく、運転資本、生産設備などの固定資産の効率を向上させていきます。


 

キャッシュ・フローと配当政策:営業キャッシュ・フローを増大させ、積極的な新規投資、株主還元を実施

 旺盛な制御需要による売上拡大、また事業効率の向上により、営業キャッシュ・フローは着実に増加しています。今後も営業キャッシュ・フローの増大に努めるとともに、DX推進による効率化、事業分野の拡大に向けて成長投資などを積極的に行っていきます。
 株主還元については、安定的かつ積極的な配当を実施しており、2021年度は当初予定の50円から100円に増配しました。







ESGの取り組みを強化し、持続可能な社会の実現を目指します。

低炭素・循環型社会実現への貢献

 新中期経営計画の策定と合わせてマテリアリティを特定しており、グローバルで大きな社会課題となっている「気候変動への対応」を3つのマテリアリティの内の一つとし、重要な経営課題として取り組んでいます。
 2030年に向けて、IDECグループの技術、製品を活用した顧客・社会の環境負荷低減に貢献することで、持続可能な社会の実現を目指していきます。





人的資本に関する取り組みの拡大

 経営基盤強化の一環として、エンゲージメントサーベイ(従業員意識調査)を実施し、調査結果から抽出した、人材マネジメントシステムの強化やダイバーシティ&インクルージョンの推進、働き方改革といった課題に対する対策を推進してきました。
 2022年には2回目のサーベイを予定しており、将来的にはグローバルでの実施を検討しています。社員の声を反映した課題解決を通じて、人的資本への投資を強化することで、社員エンゲージメントの向上を目指していきます。


 
 
 

ガバナンスのさらなる強化

 経営の透明性と効率性を向上するため、積極的に社外取締役を任用しており、過半数が独立した社外取締役となっています。
 またスキルマトリックスにより取締役の専門性を分析し、2022年には経営課題と関連して強化したい分野に見識の深い、新任2名の取締役の拡充を図っています。取締役の実効性向上に向けた取り組みを継続することで、安定的・長期的な企業の信頼性と企業価値向上を図っていきます。