社長メッセージ
ソリューション提案の強化によりカスタマーサクセスを実現し、社会全体の安全・安心の追究とウェルビーイングの向上を目指します。
依然として続く新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、これまでにも増して、人々の働き方やライフスタイルの変化のスピードは加速しています。またサステナビリティの観点では、地球規模での気候変動への対応も進んでおり、事業活動を通じた社会課題の解決が重要な経営課題となっております。人と機械の最適環境を創造し、世界中の人々の安全・安心・ウェルビーイングを実現すること。これは創業以来変わることのない、私たちの想いです。IDECは、誰もが健康で、幸せに、生き生きと暮らすことのできる社会を実現するための取り組みを推進しております。
変化し続ける事業環境に対応するための新たな変革への挑戦
IDECグループでは、さらに加速する環境変化に対応するためのさまざまな取り組みを推進しております。DX(デジタルトランスフォーメーション)や業務改革の推進により、働く環境の変化に合わせて、リモートワーク、裁量労働の導入といった、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を前提とした制度の見直しを行っております。
2020年からは、グローバルな情報発信基地の役割を担うスタジオを本社内に設置し、動画制作に加え、製品販促のための情報配信や、オンラインセミナー・説明会の実施などを推進してまいりました。同時に、グローバルでのデジタルマーケティング導入や、業務プロセスの自動化などによる、サービスレベルの向上や業務効率化を積極的に行っております。
またコロナ禍において、自動化や省人化、非接触、遠隔監視・操作といったキーワードが注目を集めており、働く人々の安全・安心・ウェルビーイング向上のための需要も高まっております。こういったニーズを踏まえた新製品の開発を推進するとともに、ソリューション提案を強化するための組織として、2022年4月に技術営業部を立ち上げました。
これまでの売上は、制御用操作スイッチをはじめとする各種コンポーネンツが中心でした。今後は、既存の販売網を活用することでコンポーネンツビジネスを強化しつつ、IDECグループが最も強みを持つHMIや安全をコアとしたソリューション提案に注力することで、お客さまの課題を解決し、カスタマーサクセスを実現できる体制づくりを行ってまいります。
特に、工作機械や自動車、ロボット、AGV(無人搬送車)・AMR(自律走行搬送ロボット)といった、これまでのノウハウや販路を活かすことができ、グローバルでの市場成長が見込める業界を中心に、売上拡大を図ってまいります。
2021年度の事業概況
世界でコロナ禍からの経済正常化が急速に進み、主要顧客である製造業の設備投資需要が、予想を遥かに超える高い水準となりました。IDECグループが事業を展開している日本、米州、EMEA、アジア・パシフィックの全地域においても、自動車、工作機械、半導体、ロボットといった各業界の需要が大幅に回復いたしました。また、米州やEMEAでは、コロナ禍をきっかけとした医療業界向けの新しい受注なども増加いたしました。
下期に、半導体関連の電子部品の調達不足や物流面の影響があったものの、主力のスイッチ事業を中心に全製品群が好調に推移した結果、売上、受注ともに過去最高額を更新いたしました。売上高は708億円(前年度比31.1%増)、受注高は945億円(前年度比63.2%増)となりました。
また、プロダクトミックスや製品価格の見直しなどにより、売上高総利益率の改善を図るとともに、生産・販売・物流拠点の再編、デジタル化推進など構造改革による固定費低減などにより、販売管理費の大幅な削減を実現いたしました。これらの結果、利益についても過去最高を記録し、営業利益97億円(前年度比139.3%増)、営業利益率は13.7%となりました。
安全・安心・ウェルビーイングを追究・実現するための4つの基本戦略
人と機械の最適環境を創造し、世界中の人々の、安全・安心・ウェルビーイングを実現するため、IDECグループでは成長戦略の推進、収益性の向上、経営基盤の強化、ESGの取り組み強化、という4つの基本戦略に基づいた取り組みを推進しております。
成長戦略の一環として、さまざまな業界のリーディングカンパニーとのコラボレーションによる、新製品開発や販売網の拡大を図っております。2021年には、アルプスアルパイン株式会社との合弁会社となる、「IDEC ALPS Technologies株式会社」を設立いたしました。両社のHMI・センシング技術、ノウハウを活かした今までにない製品開発を推進しており、2022年度中の発売を予定しております。また、世界で初めて電動アシストホイールと、AGV・AMRに搭載される安全自律走行ホイールを開発した、フランスのez-Wheel社とのパートナーシップ契約を2022年に締結いたしました。今後は、これら新製品を含めた各コンポーネンツの販売強化に加え、お客さまごとに異なる多様なニーズや課題にお応えする、最適なシステムソリューションを戦略的に展開してまいります。
収益性の向上については、グローバル拠点やサプライチェーンの再編に加え、製品の統廃合や製品価格の適性化、新技術を活用した新製品比率の向上などを図っております。また、急拡大した受注に対応するため、国内外の生産拠点に新たな自動化設備を導入し、効率化を図ることで、生産キャパシティの拡大を推進しております。
経営基盤の強化としては、スタジオを活用したデジタルコンテンツの拡充や、基幹システムの見直し、営業支援・人事システムの刷新などによる、効率化と全社最適化を図っております。
持続可能な社会と企業価値向上の実現に向けたサステナビリティ対応の強化
2015年に採択されたパリ協定の実現に向けて、2050年までのカーボンニュートラルを目指した取り組みがグローバルで進んでおりますが、企業が持続的に成長していくためには、気候変動をはじめとする社会課題の解決を事業につなげ、社会に貢献することが重要と考えております。IDECグループでは、事業活動を通じた課題の解決により、持続可能な開発目標(SDGs)を達成していくためのさまざまな取り組みを行っております。2009年から国連グローバル・コンパクトに加盟し、10原則に基づいた活動を推進しており、2018年にはCSR委員会を立ち上げ、環境、社会、ガバナンス、安全、品質を重点分野と定め、継続的な活動を推進しております。
また『The IDEC Way』のもと、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に向けた取り組みを加速させるために、新中期経営計画の策定に合わせて、重点的に取り組むべき課題であるマテリアリティの特定を行いました。気候変動など社会課題が与える影響が大きくなっていることを踏まえて、「気候変動への対応」もマテリアリティとして選定しており、2030年の目指す姿を実現するための取り組みを推進しております。
環境対応をより強化するため、2021年に環境推進室を新設し、常務執行役員を環境担当として任命するとともに、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明いたしました。2021年から2022年にかけて、TCFDのガイダンスに沿って気候関連リスクと機会のシナリオ分析などを進めてまいりましたが、この度TCFD提言に基づいて情報を開示することとなりました。また、2024年度までに2019年度比でCO2排出量を24%削減し、新製品発売に占める環境配慮強化型製品の比率を60%とする目標も掲げております。
社会面では、ディーセント・ワークを積極的に推進しており、性別や国籍などを問わず、多様な人材が活躍できる働きやすい職場環境づくりや、過重労働の予防などを推進しております。人材の育成にも力を入れており、エンゲージメントサーベイ(従業員意識調査)の結果を踏まえて、2022年度より新人事制度を導入いたしました。新制度のもと、キャリアプランの明確化や、社員の働きがい、モチベーションの向上、専門性を持った人材の育成などを推進しております。ディーセント・ワークをグローバルに推進することで、IDECグループ社員のウェルビーイングを向上してエンプロイーサクセスを実現し、エンプロイーサクセスが最終的にはカスタマーサクセスとなるような好循環を実現していきたいと考えております。
ガバナンス面では、新たな市場区分であるプライム市場に期待されるより高いガバナンス水準に応えるため、改訂ガバナンスコードに対応して「IDECコーポレートガバナンス・ポリシー」を制定・公開し、さらなるガバナンスの強化を図っております。2021年4月には社外取締役が過半数を占める、任意の指名委員会を取締役会の諮問機関として設置しており、取締役候補者の指名、次世代の経営幹部候補者の育成計画を客観性・独立性をもって決定する体制を整えました。また、取締役会のさらなる実効性向上に向けて、2021年度からは第三者機関による実効性評価を実施し、客観的な評価から改善課題を洗い出すなど、常に透明性と効率性を重視した経営を行っております。
代表取締役会長兼社長 舩木俊之