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防爆技術

防爆とは?からはじまって爆発の条件や爆発防止対策や防爆配線工事などを説明します。

安全規格における防爆の位置付け

機械安全の国際規格であるISO/IEC規格は、ISO/IECガイド51により、A.基本安全規格、B.グループ安全規格、C.個別機械安全規格、の3階層に分けられており、防爆安全規格は、B.グループ安全規格の階層での要求規格と規定され、安全を実現する為に必要です。

防爆とは

爆発性ガス蒸気雰囲気を生成するおそれのある危険場所で、電気機器から発生する火花や高温によるガス蒸気の爆発を防ぎ、電気機器を安全に使用するための考え方です。

爆発の条件

火災や爆発は、可燃性物質と支燃性物質により生成された爆発性ガス蒸気雰囲気と、着火の原因となる電気花火や電気機器の故障などによる過熱で高温となる部分(着火源)の存在が重なったときに発生します。


ガス蒸気危険場所

工場・事業所で爆発性ガス蒸気を取り扱っていて、それらが操作中または作業中に大気に放出・漏洩されると、空気と混合して「爆発性雰囲気」を形成します。爆発性雰囲気の量が無視できないほど多く、また同時に、着火源としての電気設備により爆発事故につながる可能性のある場所を「危険場所」と言います。
例えば、危険場所となりうる場所としては、石油化学プラント・塗装作業場・ガソリン給油所のみならず、半導体製造でのアルコール洗浄工程や揮発材料を添加する化粧品・食品の製造工程等広範囲にも存在します。
危険場所は、爆発性ガス蒸気の放出・漏洩の頻度および爆発性雰囲気の存在時間によって、次のように分類しています。


 

爆発防止対策

電気設備による爆発または火災が発生するためには、

1) 危険雰囲気の存在

爆発性ガスが存在し、空気と混合して濃度が爆発限界内にあること。

2) 点火源の存在

電気設備において対象とする爆発性ガスに発火エネルギーを与える能力のある電気火花が発生するか、または高温部が存在すること。

この条件が共存することが必要です。従って電気設備からの爆発または火災を発生させないためには、危険雰囲気が生成する確率と電気設備が点火源となる確率との積を実質的にゼロと見なせるような小さな値以下に保持しなければなりません。第1に危険雰囲気の生成防止、次ぎに電気設備の防爆化が必要となります。

防爆構造の分類

現在危険場所で使用する電気機器には、各種の防爆構造のものがあり、大別すると次の3種に要約されます。

(1) 点火源の実質的隔離
(2) 無火花電気機器の安全度の増強
(3) 点火能力の本質的抑制

防爆構造の種類

1)耐圧防爆構造

容器が、その内部に侵入した爆発性雰囲気の内部爆発に対して、損傷を受けることなく耐え、かつ、容器のすべての接合部または構造上の開口部を通して外部の対象とするガスまたは蒸気の爆発性雰囲気へ引火を生ずることのない電気機器の防爆構造

耐圧防爆構造

2)安全増防爆構造

正常な使用中にはアークまたは火花を発生することのない電気機器に適用する防爆構造であって、過度な温度の可能性並びに異常なアークおよび火花の発生の可能性に対して安全性を増加する手段が講じられた電気機器の防爆構造

安全増防爆構造

3)内圧防爆構造

容器内の保護ガスの圧力を外部の雰囲気の圧力を超えるある値を保持することによって、または容器内のガスまたは蒸気の濃度を爆発下限より充分に低いレベルに希釈することによって、防爆性能を確保する電気機器の防爆構造通風式と封入式があるが、通風式の例を図に示す。

内圧防爆構造

4)本質安全防爆構造

正常状態および仮定した故障状態において、電気回路に発生する電気火花及び高温部が規定された試験条件で所定の試験ガスに点火しないようにした防爆構造例えば、図に示すように、商用電源の高い電圧を混触防止板付の変圧器で安全な電圧に降圧し、抵抗器で安全な電流に制限することのより、ガス蒸気に点火するおそれがないようにしている。
耐圧防爆構造などの他の防爆構造は正常な使用状態だけで防爆性能を有しているのに対して、本質安全防爆構造は規格で定められた電気回路の故障状態においても防爆性能を有している。

本質安全防爆構造

防爆配線工事の概要

防爆電気配線については「電気設備技術基準」や「ユーザーのための工場防爆電気設備ガイド(2012)」、工場電気設備防爆指針に要件がそれぞれ示されています。
また、「国際整合指針」に適合した機器の場合、独立した端子箱が不要になる直接引込み方式だと、外部配線の引込口が防爆性能を確保することにもなります。
構造規格品と比較して、配線工事での適切な施工がより重要となります。

防爆配線工事の種類

1) ケーブル配線工事

ケーブルの種類

使用するケーブルは一般の仕様に適合している他、ケーブルの耐候性や耐薬品性などのケーブルの材質、許容温度に注意し、また容器内部の爆発に対し電気機器に付属している耐圧パッキン式引込器具などで確実にシールできるものを選定する必要があります。

ケーブルの敷設方法

ケーブルは、原則として鋼製電線管、配管用炭素鋼鋼管などの保護管に納めるか、金属製またはコンクリート製ダクトなどの防護装置に納めて外傷に対して充分な保護を行うほか、以下の事項に従って施工してください。
① 保護管の内径は、ケーブル外形の1.5倍以上とするが、保護管が短小で曲がりが少ない場合には、通線に支障がない範囲で小さくしてもよい。
② 爆発性ガスが保護管やダクトを通じてゾーン1からゾーン2または非危険場所へ流動するのを防止すること。
③ ケーブルの接続は、必ず耐圧防爆構造または安全増防爆構造の接続箱を使用して行うこと。

2) 電線管配線工事

絶縁電線の種類

使用する絶縁電線は一般仕様に適合しているほか、絶縁電線が点火源とならないように周囲の爆発性ガスや油類・溶剤などに対しての耐久性や、周囲の温度につき充分検討するとともに、電気機器への引込みや端末処理などの作業性を考慮した最適なものを使用してください。

金属管の種類

使用する電線管は、JIS C8305(鋼線電線管)に規定するねじ付き厚鋼電線管を使用してください。

施行方法

電気機器への接続や電線管付属品への接続は電線管ねじにより、ねじの有効部分で5山以上結合させ、ねじの損傷、緩み、外れがないように機械的に十分堅固に接続させてください。

3)本安回路の配線

留意事項

① 本安回路の配線は、他の回路からの電磁誘導、静電誘導や混触を防止するために全閉構造の鋼製ダクト、または鋼製金属管を使用し、絶縁電線またはケーブル工事により独立して敷設する。ただし、他の回路が存在せず、混触および誘導のおそれが全くない場合には金属管などの防護処理を省略できる。
② 使用電線は600Vビニール絶縁電線、弱電計装用ケーブル、またはこれと同等以上の電線やケーブルで公称断面積が0.5mm2以上の軟銅より線、またはこれと同等以上の強度および断面積を有するものを使用する。
③ 危険場所相互の境界、および非危険場所との境界において爆発性ガス流動防止の処理を施すこと。
④ 非危険場所での分岐や接続は、非本安回路との混触を防止するために隔離板などにより確実に分離する。
⑤ 本安回路の配線には、絶縁電線が明青色のものを使用するか、端末部に明青色のテープを巻くなどして、一般回路との識別処理をすること。
⑥ 非危険場所のパネル内の本安回路配線は、中継端子台を設けて接続する。
なお、中継端子台は誤接続を防止するために明青色のものを使用すること。なお、本安関連機器が端子台と同等と見なせる場合は、中継端子台を省略してもよい。
⑦ パネル内の配線は、シールド線を使用するなどして混触・誘導

爆発試験設備

爆発試験設備は、耐圧防爆構造の電気機器の防爆性能を確認するために必要な試験設備で、その試験方法は工場電気設備防爆指針や防爆構造電気機器型式検定ガイド(国際規格に整合した技術的基準関係)に定められています。
当社では、長年にわたって爆発試験設備を中心として防爆関連試験設備を拡充し、安全性の確保に努力してまいりました。ここにご紹介します爆発試験設備は、防爆性能試験所に設置してある高性能の設備です。

試験槽

試験槽は急速開閉式密閉形と呼ばれるもので、右側は小型試験槽、左側は大型試験槽です。右側奥はガス混合槽(エチレン用)で、屋外に水素用があります。


本質安全防爆構造

制御盤

試験に伴うすべての操作を行うもので、試験槽の制御弁開閉は、空気圧で行います。ただし、制御盤には生ガスは入っておりません。試験槽内および試験品内の試験ガス圧力は左側の主制御盤の圧力計によって知ることができます。


本質安全防爆構造

火花点火試験装置

本質安全防爆構造の電気機器の防爆性能を確認するために必要な試験設備です。